「アーサー王物語」のなかのフェミニズム的問い

  「すべての女性がもっとも望むことは何か」

世界史講義録(あっここで退(ひ)かないで下さい!)の「第1回 最初の授業」のファイルは、金岡新先生が生徒に世界史に興味を持ってもらうために最初の授業で話しているアーサー王の物語の一話だそうですが、このお話は一読の価値ありです。私はそのファイルをプリントアウトして子どもと楽しませて(?)いただきました、有難うございます!

「『すべての女性がもっとも望むことは何か』を答えよ」


というのが、アーサー王が邪悪な騎士(というか、悪い魔法使いという感じ)にかけられた問い。
これに答えられなければ王国が奪われてしまう。


で、その答えがすごい。というか、すごく現代的。いや、現代に通じる。
面白いので印刷し、小学校高学年と低学年の二人の子どもに朝の時間のあるときに、ファイルを音読させた。
ストーリーパターンとしては日本昔話「大工と鬼六」にも似た展開。
答えを見つけるために1年の猶予期間を与えられたアーサー王は旅をしながら会う女性ごとに、幼女から老婆まで答を聞いてまわるが、みんなてんでんばらばらなことを言って、これといった答が見つからない。が、ついにある老婆に答を授けられる。(交換条件つきで)

一年後、邪悪な騎士の前で、間違えた答えをいくつか言い、鬼、じゃなかった悪い魔法使いはそれを聞いてゲラゲラ笑う(この展開も「大工と鬼六」のよう)が、アーサー王が最後に、正しい答えを言うと、約束どおり退散する。


そして、答えを教えてくれた老婆が、この正しい答えと引き換えにアーサー王に「若くて立派な騎士をお婿さんにほしい」という条件を実行するよう迫り、アーサー王の甥のガヴェィンが老婆のお婿さんになる
私は「ここは『美女と野獣』の逆パターンみたいだね、醜い老婆が若くて強い男を婿に所望して、叶えてもらうわけだ」などと、ところどころで子どもに蘊蓄を垂れるが、これはフェミニズムの問いだとかの余計なことは言わない。

いい性格をしているハハとしては、ただお話を読ませたのでは面白くない。

せっかく「問い」の形になっているので、「アーサー王が老婆に出会った」ところで中断させ、「さて、ここで老婆が教えてくれた正しい答えはなんだったしょうか〜?」という問いを子どもに出してから学校に出した。

続きは帰宅後。「(答が)思いつかない」という上の子を私は「まだわからないのか。そんなことでどうする」と、さながら悪い魔法使いのごとく、散々をおちょくってやった。(オニだアクマだ>自分)

(とくに上の子どもは「漫画家になりたい」と不向きなことを文集に書いていたので、ハハとして、これは方向転換させるいい機会だとばかりに、「マンガ描く人はお話を作る力もないとダメなんでしょうが。これくらいの問いに答えられないようじゃ到底無理だね」と、ここぞとばかり言いたい放題。)(なんつう親だ>自分)

下の子の方が口がまわる、頭もまわる。しかし上の子はまるでダメ。上の子も頭の中ではそれなりに思うところや考えるところもあるのはわかるが、言葉として表出するのが不得手だ。

私  「『すべての女性がもっとも望むことは何か』」
下の子 「愛。お金。かっこいい彼氏。美貌。永遠の若さ。可愛い赤ちゃん。豪華なお城」
 思いつく限りいろいろ色々言うので感心する。でもちがう。
下の子「そうか!わかった! 『平和』だ!」

 おおっすごい。でもちがう。両者とも降参だった。

しょうがないので、答えが書いてある続きを読ませると、上の子はああそうかと理解する。
下の子は「よくわからない」というので解説してやる。(えらそーなハハ)
で、その続きの話がその答えの具体的な話なんだよと解説しながら、続きを途中まで読み、また途中で問いかけにした。

「じつはこの老婆は悪い魔法(というか呪い)にかけられていて老婆の姿をしていた若い女性だった。しかし望みがかなったことにより、半分だけ魔法(というか呪い)が解けて、もとの美しい姿に半分だけもどることができた。この妻は一日の半分だけ元の美しい女性の姿でいられることになったが、あとの半分は老婆の姿でいなければならない。
 ガヴェィンは妻に『夜にだけ美しい姿に戻ってほしい』(他の男に美しい妻を見せたくない)と希望したが、妻は『昼に美しい姿に戻りたい。他の殿方やレディと話すときにはきれいな姿で楽しく社交したい』と言った。それに対してこの夫は、さて、なんと答えたでしょうか」


これは最初の問いの「答え」に関連する答えなんだよといったら、下の子は「ガヴェインはこう言ったんじゃない? 云々」と簡単に正しい答えを口にした。(正直私は目元がじわっときた。)

しかし上の子は考えすぎて(??)わからなかった。(バカだ。)
「アホー!おまえは 創造力 連想力 発想力 推理力が絶対に足りないぞー!!!」

「これじゃ絶対に漫画家なんて向いてないってー!さっさとあきらめろー!」と、上の子をさんざん笑ってやった。(なんつうひどい親だ>自分)
(注/これ読んでる方、字面そのままのオヤコ関係に受け取らないでくださいね)(冷や汗)

この二つの答えは世界史講義録「第1回 最初の授業」に当然出ている。
 アーサー王物語にこんな「問い」をめぐる話があったとは。そしてその答えが、こんなにも現代のものだとは。
 すぐ答が知りたい人は下方の空白をスクロール

最初の答え
「すべての女性がもっとも望むことは、『自分の意志を持つこと』」、
次の答え
「君の好きにしていいよ」 と、ウチの下の子は言った。自分の意思が尊重されることですね。二つのQはフェミニズム的問いというより、人権感覚の問題ですよね

   「すべての女性が最も望むものは何か」(アーサー王へのなぞかけ)
2011/6/25 (Sat.)
自分ちのURLを逆検索してみたら、ここアーサー王のクイズのファイルが「はてなブックマーク」に登録されていた。
(;^_^A

「はてなブクマ」は使ったことがないのでよくわからないのですが、有難うございます。

Date: 2003-07-02 (Wed)  04-11-27再録

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